『父祖イスミール、四巻』
歴史が記されるより前の神話の時代、千年以上に渡り人々を統べてきた王イスミールは、その生涯の終わりを前にして、人と竜の王に相応しい死に場所へ思いをはせた。
王は彼の勇士と精兵達を御前に招集し、者どもに問うた。
「人と竜の王たる我に相応しき死に場所をどこへ求めたものか」
初めの従者が歩み出て具申した。
「東へ参られよ、大海が空に触れる地へ」
二人目は恭しく頭を下げて言った。
「西へ。太陽が大地に口付ける地にございます」
また三人目が言う。
「ニルンの凍てつく峰々、北の果ての氷の墓へ」
そして四人目が申すことには、
「煙と炎の柱が立ち並ぶ南の地がよろしかろう」
しかし、人と竜の支配者であり、遥かな時を超える王であるイスミールは、大いに失望して言った。
「我はこのムンダスのあらゆる土地を旅し、多くの人々を征服してきた。されど、どこにこの首を預けたものか? もしも我が身を東、あるいは西、また北や南に休めたなら、それが分断を招くであろう」
「土地の人々は、我が墓を自分たちのものと叫ぶに違いない。彼らは『イスミールは我らの王、我々のもとで眠られているのだから』と言うだろう。そして我が子たちは互いに争いあい、我が骸を引き裂き彼らのもとへ置くのだ。首はこちらへ、腕は向こうへ、我が足、そしてこの猛き心臓までも」
その時、執政や従士の中から、一同の誰も見覚えのない、少年とも呼べる若者が名乗り出て、低く頭を垂れて言った。
「ならばニルンの何処でもなく、空へゆかれてはどうですか。我々みなを見守れるように」
人と竜の王たるイスミールはこの考えを気に入り、言った。
「だが子よ、どのようにして空へ渡ったものか? どのような山も、人の手が作った梯子も、それほど高くまでは行けまい?」
少年が答えて言った。
「そのようなものはございません。山も、梯子も、階段もありません。けれどある場所を知っています。ひとつの石がある場所を。それがエセリウスへの道です」
「その石はどこで見つかる?」天へと昇ることを決意し、人と竜の王は叫んだ。
「どうぞこちらへ」少年が手招いた。
それからイスミールは彼の全ての勇士たちと従士たちを呼び集め、天に昇ることでついにその命の終える決意を告げた。そして、今や非常に年老いたイスミールは、その石の足元に横たわると、星たちの中へ引き上げられていった。
彼の勇士たちや従士たちが見上げると、その空には、天翔ける彼らの王の姿が見えた。また彼は三人の従者を伴っていた。大公と、淑女、彼の見事な駿馬である。
勇士たちと従士たちは皆、その谷とエセリウスへの道を守ることを誓った。しかし、彼らがその道を示した少年を探すと、もうどこにもその姿は見つからないのだった。
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ESOのデータ上に存在していたものの、ゲーム内に実装されずに削除された没書籍です。
原文:Online:Ysmir the Forefather, Volume IV - The Unofficial Elder Scrolls Pages (UESP)
(https://en.uesp.net/wiki/Online:Ysmir_the_Forefather,_Volume_IV)
2024年5月 訳
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